【電力系統】送電線はなぜ3本セット?(その2)【三相交流】
こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。
前回は,鉄塔における送電線が3本セットであることをお話ししました。これは鉄塔の送電線に限らず,身近な電柱の線(配電線ですね)でも同じことです。
今回はなぜ送電線が3本セットになっているかについてつぶやこうと思います。いつもより,少し難しいかもしれません。
三相交流
まず,単相交流回路について簡単に説明します。図1を見てください。
図1 単相交流回路
電源の上側からリアクトル(いわゆるコイルの性質をもつものと思ってください)を経て,負荷に電流が流れ込む経路を便宜上,往路,負荷の下側から電源に戻る経路を便宜上復路としました。交流ですから電流の向きは矢印の向きだったり,反対の向きだったりします。
この単相交流回路を3つ考えて,組み合わせ,復路を1本にまとめたものが図2です。こういうのを三相四線式といいます。
図2 三相四線式
さて,図2において,1本1本をそれぞれ「相」といい,各相にA相,B相,C相と名前を付けます。そして,A相に流れる電流をIA,B相に流れる電流をIB,C相に流れる電流をICと呼ぶことにします。
交流の電流は(電圧も同じですが)三角関数で表すことができます。もし,今,IA,IB,ICが次のような式で表されるような関係になっていたとしたらどうでしょう?
IA=Icos(2πft-φ)
IB=Icos(2πft-φ-2/3π)
IC=Icos(2πft-φ-4/3π)
ここで,Iは電流の振幅,fは周波数,tは時間,φは例えば電圧を基準にした電流の位相です。
すなわち,IA,IB,ICは,その振幅が等しく,IBはIAより2/3π[rad]=120°位相が遅れており,ICはIBより120°位相が遅れているわけです。(※1)
式を簡単にするために,α=2πft-φとおきます。すると上式は,
IA=Icosα
IB=Icos(α-2/3π)
IC=Icos(α-4/3π)
IBとICに,高校で習った数学を思い出して,cos(A-B)=cosAcosB+sinAsinBの公式を適用すると,
IB=-0.5Icosα+√3/2Isinα
IC=-0.5Icosα-√3/2Isinα
となるので,IA+IB+IC=0となります!!
すなわち,※1の性質をもつ三相交流電流は三相分足すと0になるのです。これは電圧でも同じことです。
さて,そうなると,図2の三相の結節点のところの電流が0になりますので,復路が不要になり,
図3 三相三線式
図3に示す三相三線式で,電力が送れることになります。 もともと,6本や4本の送電線が必要だったものが3本で済むのですから,コスト的にも大きなメリットがあります。これが送電線が3本セットになっている理由なのです。
ところで,三相の振幅がまったく等しい状態というのは理想的なものであり,実際は少しずつ異なっているのが普通です。この場合,三相合計して余った分は地面や架空地線を流れます。
電圧について
今回は説明の都合上,電圧は基準点と相の間の電圧である相電圧で扱いました。しかし,通常電圧は相と相の間の電圧である線間電圧で定義されます。500kVとか275kVとかは線間電圧の実効値(振幅を√2で割った値と思ってください)なのです。
また,線間電圧は相電圧よりも√3倍大きくなります。
一般家庭のコンセントは単相です
一般家庭の100Vや200Vは三相ではなく単相です。配電線の2相から単相変圧器で,100Vと200Vを作って供給されています。
では,今回はこのあたりで。