【電力系統】発電所(2)【火力発電所】
こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。
今回は,日本の電力系統における発電所の中でも,中心的な位置づけにあるといえる,火力発電所について語りたいと思います。
火力発電所
火力発電所は,字のごとく火を燃やすことでエネルギーを生んでいる発電所です(あたりまえですね(^^;))。
大きく分類すると,蒸気タービンによるもの,ガスタービンによるもの,蒸気タービンとガスタービンを組み合わせてつかっているものがあります。
蒸気タービンによる発電所
まず,ボイラがあります。ボイラは燃料を燃やして水蒸気をつくり,タービンにおくります。エネルギーの流れで考えると,燃料のもつ化学エネルギーを熱エネルギーに変化させるものだといえます。燃料としては,石炭,重油(C重油と呼ばれるもの),天然ガス(メタン等)が使われます。
水蒸気のもととなる水は給水ポンプから供給されます。
水蒸気がタービンに送られると高圧の水蒸気が一気に膨張してタービンを回転させます。前の記事で説明したように,タービンと発電機は軸で結合されていますから,発電機の回転子も回転し,タービンで生じた回転エネルギーを電気エネルギーに変換しています。
タービンを通過した水蒸気は,復水器という装置で水に戻されます。そして復水器から給水ポンプに送られます。
すなわち,蒸気タービンは
ボイラー⇒タービン⇒復水器⇒給水ポンプ⇒ボイラー
という閉じた系を構成しています。そして,この系の中で熱力学的サイクルが生じています。蒸気タービンの熱サイクルは,ランキンサイクルと呼ばれるサイクルでよく近似されます。
なお,蒸気タービンを用いる発電所は汽力発電所とも呼ばれます。
ガスタービンによる発電所
ガスタービンは,タービン,圧縮機,燃焼器から構成されます。このうち,圧縮機とタービンは発電機と軸で結合されています。
圧縮機は大気から空気を取り込み圧縮し,燃焼器に送ります。燃焼器は燃料を燃やすことにより送られた空気を熱し,高温高圧の燃焼ガスをタービンに送ります。タービンでは高温高圧の燃焼ガスが膨張し,熱エネルギーが回転エネルギーに変換されます。使われた燃焼ガスは排ガスとして大気に放出されます。
ガスタービンのサイクルを近似するのはブレイトンサイクルと呼ばれるものです。
燃料としては天然ガスが主に使われています。
蒸気タービンとガスタービンの組み合わせによる発電所
蒸気タービンもガスタービンも,種々の物理駅制約から,その効率の向上には限界があります。そこで,少しでも効率を向上させる方法として,蒸気タービンとガスタービンを組み合わせる方法が考えられました。これはコンバインドサイクルと呼ばれています。
従来の蒸気タービンの熱効率は40%程度ですが,コンバインドサイクルでは50%を超えることも可能になります。これだけ効率が違うと,1年間の電力量(エネルギー)を考えるとたいへんな差になります。
コンバインドサイクルにもいろいろ種類があるのですが,ここでは,「廃熱回収方式」について説明します。
まずガスタービンが運転されると,排ガスを大気にすてていたわけですが,これを捨てないで廃熱回収ボイラに引き込みます。そしてこの排ガスの熱でお湯を沸かし蒸気タービンを運転するのです。
コンバインドサイクルには一軸形と多軸型があります。一軸形はガスタービン,蒸気タービン,発電機がひとつの軸上に結合されているもの。多軸形は,ガスタービンと発電機,蒸気タービンと発電機の組み合わせに分かれているものです。
多軸形は複数のガスタービンと一台の蒸気タービンの組み合わせが多く,蒸気タービンが大型であることから,熱効率が一軸形より高くなります。一方,一軸形は蒸気タービンが小型になるため,複数の一軸形を用意することで,部分負荷運転(プラント全体の容量の一部の容量で運電すること,と思ってください)で,高い効率を保つことができます。
火力発電機の回転速度
火力発電所の蒸気タービン,ガスタービンとも,その特性上高速回転が可能です。そのため,発電機の回転子における磁極のペア数を1として,50Hz系統(※1)では1秒間に50回転,1分間に3000回転,60Hz系統(※1)では1秒間に60回転,1分間に3600回転という高速回転で運転しています。
この高速回転の遠心力に耐えるため,火力発電機の回転子は円筒形というなめらかで細長い円柱状の形状をとっています。
※1:東日本:北海道電力,東北電力,東京電力の周波数は50Hz,西日本:中部電力,関西電力,北陸電力,中国電力,四国電力,九州電力,沖縄電力の周波数は60Hzです。なお,新潟県は東北電力の管轄なのですが,佐渡島だけは60Hzです。