【電力系統】変電所(5)【保護リレー(その2)】
こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。
前の記事からだいぶ間をあけてしまいました。申し訳ありません。体調を崩したり,本業の方が忙しかったりしたもので。
さて,今回は前回の続きで,保護リレーの話です。
変圧器保護
変圧の故障としてまず生じる可能性が大きいのは巻線に関するものです。巻線間短絡,巻線と鉄心間の絶縁破壊による地絡,高圧巻線と低圧巻線の混触,巻線の断線があります。この中でも頻度が高いのが巻線間短絡です。
巻線に関する故障が生じると,故障電流によるアークによるガスの発生,タンク内圧上昇によるタンクの破損,破損したタンクから漏れた油への引火といったように波及故障が連鎖していきますので,巻線故障の段階で故障を検出し,保護する必要があります。
差動リレーによる保護
変圧器の保護でも,まず使われるのが電流差動を利用した方式です。変圧器の場合には次のような原理によります。
I1:変圧器1次側電流 I2:変圧器2次側電流
n1:変圧器1次側巻線数 n2:変圧器2次側巻線数
とすると,
I1・n1=I2・n2 ……(1)
という関係が成り立ちます。これをアンペアターンの法則といいます。電圧と巻線数の関係は,V1/V2=n1/n2でした。理想的な変圧器の1次側と2次側では電力が等しくなる必要がありますから,V1/V2=I2/I1となります。よって(1)式が導かれます。
また,(1)式は,
I1/n2=I2/n1 ……(2)
と変形できます。変圧器に故障がなければ,(1)式または(2)式が成り立ちます。ところが巻線に故障が生じると,実質的にn1もしくはn2に変化が生じることになりますから,(1)式,(2)式が成立しなくなります。この原理を利用して,変圧器の故障を検出します。
変圧器保護の後備保護
前項で述べたように,変圧器保護の主保護としては,差動方式のリレーが使われます。そして後備保護としては,変圧器の過負荷保護を兼ねて短絡過電流リレーおよび中性点抵抗の保護を兼ねて地絡過電流リレーが使われます。この他に距離リレーが適用される場合もあります。
母線保護
電力系統を構成する各機器(発電機,変圧器,送電線,趙相設備等)は母線を介して接続されています。その意味で母線は,電力系統の要であるともいえ,母線の故障は広範囲に故障を拡大させるポテンシャルを持っています。
母線保護の特徴としては,
・故障拡大のポテンシャルが大きいことから,確実性がより求められる。
・端子数が多い。
・各ライン開閉器の開閉に伴って,動作させる遮断器が異なる。
・外部故障時の故障電流が大きく,変流器が偏磁しやすい。
・母線構成によっては,内部故障でも電流流出がありうる。
などがあります。
母線保護では,上記のような特徴に対応するため,複数形式の保護リレーを組み合わせて使用します。使われるリレーとしては,
・比率差動リレー
・過電流リレー
・地絡過電流リレー
・地絡過電圧リレー
・不足電圧リレー
などがあり,これらの保護リレーによって論理和,論理積によるシーケンスを組んで保護システムを構築します。
保護リレーも踏み込んでいくと,とてつもなく奥深い世界なのですが,今回はごく表面的なところを紹介しました。
それでは,今回はこのあたりで。次回は調相設備などを紹介したいと思います。