電気でぶ猫のつぶやき

電力系統を中心に,電気関係の記事や,電験などの電気関係の資格の話などをやさしくつぶやきます。

【電力系統】変電所(4)【保護リレー(その1)】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は,保護装置に関してつぶやこうと思います。保護装置というと,もしかして遮断器まで含まれてしまうのかもしれませんが,今回の記事で語りたいのは,各種故障を検出して,遮断器に動作信号を送出するシステム,いわゆる保護継電器とは保護リレーと呼ばれる装置についてです。なので,タイトル副題も「保護リレー」にしておきました。

変電所の保護

 変電所の話を始める前に,発電所について語っていたのですが,発電所にも保護リレーはあります。まぁ,うっかり説明するのを忘れたんですけど(^^;)。こちらはまた別に記事を立てたいと思います。

 さて,変電所の保護ですが,主たるところでは,送電線保護,母線保護,変圧器保護があります。以下,これらを少々詳しく――ただし,簡単な範囲で解説します。

送電線保護

 まず,送電線について詳しく説明しないといけないところなのでしょうが,それは別の記事に譲ります。ここでは,ごく簡単に。送電線のうち架空送電線は,ざくっというと鉄塔,がいし,電線から成り,絶縁はがいしのみによっているます。このような単純な構成のため,設備自身による故障が少ないという特徴があります。さらに故障が生じても,適切に除去されれば送電線そのものは壊れにくいという特性があります。

 一方で,送電線は電力系統を構成する設備の中でも空間的な広がりが大きいことから,故障の発生比率はもっとも高いといえます(落雷はもちろん,クレーンや樹木との接触,比較的電圧階級が低いところでは蛇による故障もよくあります)。

 そこで,まず故障確率が大きいことから,高速に確実に故障を検出することが求められます。これは,さらに送電線自身は故障によって壊れにくいという特性を活かして,遮断器によって故障を除去したら,短絡アークや地絡アークが消滅するのをまって,再度遮断器を投入する「再閉路」という制御が可能になってきます。再閉路を行うことができれば,系統の安定運転に寄与できるのです(このあたりも別の記事で詳述予定)。

 さらに,送電線は空間的な広がりが大きいことから,変電所から距離がある故障点の場合,いかにして正確に故障を検出するかということがひとつの課題になります。

 といったところを背景に,送電線保護でよく使われる保護リレー方式を以下に紹介します。

 

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電流差動リレー方式

 図1を見てください。

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  図1 電流作動リレーの説明図(保護区間に故障がないとき)

 

 変電所Aと変電所Bの間の送電線(簡単のため,単線で表しています)のそれぞれの端に,変流器を設けます。そして,お互いの正の向きを逆向きに定義します。このようにすると,この区間で故障がなければ,IA+IB=0となります。一方で,図2に示すように,区間内で故障が発生すると,IA+IBが0でなくなります。このようにして,故障を検出する方法を電流差動方式といいます。

 

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 図2 電流作動リレーの説明図(保護区間に故障が発生しているとき)

 

 この方式は,確実に故障が検出できる優れた方法なのですが,変電所Aと変電所Bの間で通信が必要になり,コストが高い方法でもあります。それで以前は重要な275kV以上の超高圧系統で用いられていましたが,昨今では154kV級の送電線でも使われるようになっているようです。

回線選択リレー方式

 回線選択リレー方式の原理を図3と図4で示します。

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   図3 回線選択リレーの原理(保護区間に故障がないとき)

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  図4 回線選択リレーの原理(保護区間に故障が発生しているとき)

 

 2回戦の送電線をそれぞれ簡単のために単線で示しています。図3に示すように,保護区間内に故障がなければ,各回線のそれぞれの電流は同じ大きさです(すなわち,I1=I2)。

 しかし,区間内に故障があると,図4に示すように,例えばA単側が電源側とすると,I2>I1となります。さらにB端側(負荷側)では,どちらの回線でも同じ大きさの電流が流れますが,向きが逆になります。このような現象を利用して故障回線を検出する方式を回線選択方式といいます。

 回線選択リレーは,66kVもしくは77kVといった,電力系統としては比較的電圧が低い階級で用いられています。

送電線保護の後備保護

 上で述べたような電流差動方式や回線選択方式は主保護,いわゆるメインとなる保護方式として用いられますが,この主保護が万が一失敗することも考慮に入れなければなりません。このようなときに動作するのがバックアップリレー,後備保護リレーです。

 送電線保護では,上記の方式が主保護の場合,後備保護としては,距離リレー方式が使われることが多いようです。距離リレーというのは,電圧と電流を測定してオームの法則からインピーダンスを計算し,そこから故障点までの距離を測定するものです。送電線の単位距離あたりのインピーダンス,送電線の距離は既知ですから,故障点までの距離を測定することで,保護区間かそうでないかを区別することができるわけです。

 

さて,だいぶ長くなりました。今回はこのあたりで失礼します。次回は母線保護,変圧器保護について語りたいと思います。