電気でぶ猫のつぶやき

電力系統を中心に,電気関係の記事や,電験などの電気関係の資格の話などをやさしくつぶやきます。

【電力系統】変電所(1)【変電の概念,変圧器(その1)】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回から何回かにわたって,電力系統における重要な構成要素である変電所について語りたいと思います。

変電って?

 変電所は文字通り,変電を行う所です。では,「変電」とはなんでしょう?

 変電とは電力に関わる電気量――電圧や電流の性質を変換・調整することです。三相交流におけるある相の電圧は,例えば次のように表せます。

  V=√2Vm・cos(2πft+φ)

   ここで,√2Vmは電圧の振幅,Vmは実効値,fは周波数,tは時間,φは位相

振幅と実効値はここではまとめて「大きさ」といってしまいましょう。時間はさすがにいじれませんから除くとして,電圧の大きさ,周波数,位相を変換したり調整したりするのが変電です。このとき電流も(従属的に?)変換されたり調整されたりします。

 上では電圧・電流を交流として扱いましたが,交流を直流に変換したり,その逆の変換も変電です。

 しかし,狭い意味では,変圧器による電圧の大きさの変換(変成)を変電と呼ぶ場合もあります。この観点では,周波数の変換や交流・直流の変換を行うところは「変換所」と呼ばれます(これもいずれ解説します)。

 電圧の変換(変成)には変圧器が使われますが,以前説明したように,無効電力を使うことで,電圧の大きさを調整することができます。並列コンデンサ(スタコン,シャントキャパシタ)や並列リアクトル(シャントリアクトル),静止型無効電力補償装置(SVC)などを使うことで,無効電力を制御し,結果として電圧を調整することができます。これも当然変電です。

 

 

変圧器(その1)

  変電所における役割で大事なもののひとつは,電圧を変換(変圧,変成)することです。電力系統では,送電における損失を少なくするために,発電所で一度電圧を500kVや275kV等に思い切り高くして,その後,各変電所で徐々に電圧を下げながら,需要家に電力を届けます。この発電所で電圧を高くしたり,変電所で電圧を低くしたり,というのが変圧器の役割です。

 変圧器の原理は,電磁気学におけるアンペールの法則とファラデーの法則です。以下に単相変圧器の簡単な模式図を示します。

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  単相変圧器は,磁気媒体である鉄心に独立したふたつの巻線を巻いたものです。基本的には電源に連系する方の巻線を一次巻線,負荷に連系される方の巻線を二次巻線といいます。ただし,二次巻線に負荷が連系される場合は,ちょっと説明が難しくなるので,今回は解放状態とします(負荷がつながる場合の説明もいずれしようと思います)。それぞれの巻線の巻き数をn1,n2とします。

 一次巻線に電圧v1の電源を連系し,電流i0が流れたとします。するとアンペールの法則により,コイルの中を貫く磁界が生じ,鉄心の中を磁束φが通ることになります。なお,巻線が鉄心に巻かれたことにより,鉄の磁気的作用により磁束は,空気中に巻線が置かれた場合より著しく強くなることを申し添えておきます。

 さて,この磁束φが時間的に変化すると,ファラデーの電磁誘導の法則により,一次巻線には起電力

  e1=n1・dφ/dt             ……(1)

が生じます(※1)

※1:レンツの法則を知っている方は,(1)式の右辺になぜ負符号がつかないのかと思うかもしれません。これは,起電力の正方向を,電源電圧・電流と逆方向に取っているためです。

 また,二次巻線にも同様に磁束φが鎖交しますから,

  e2=n2・dφ/dt             ……(2)

 (1)(2)式から

  e1/e2=n1/n2            ……(3)

となります。ところで,変圧器の一次端子電圧v1とe1,二次端子電圧v2とe2はほぼ等しいので(正確には巻線のインピーダンスによる電圧降下の分だけ異なります),(3)式から,

  v1/v2≒e1/e2=n1/n2 

という関係が導かれます。

  すなわち,一次電圧と二次電圧が変圧器の巻数比によって変換(変圧,変成)されることがわかります。これが変圧器の原理です。

 

  次回は,変圧器の結線方法について語りたいと思います。ではまた。