電気でぶ猫のつぶやき

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【電力系統】発電所(7)【原子力発電所その1】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は,いよいよ,電力系統界の大悪役,原子力発電所の登場です(^^;)。

 まぁ,原子力発電所となると,いろいろな思いを抱く方もおられると思いますが,この記事では(あまり難しくない)技術的な事項をたんたんと語ろうと思います。

 原子力発電所

原子力発電の概要

 とても乱暴にいうと,原子力発電は火力発電とよく似ています。火力発電はボイラーでお湯を沸かして水蒸気を作り,その高温高圧の水蒸気が膨張してタービンを回転させるのでした。

 原子力発電では,ボイラーの代わりに原子炉でお湯が沸かされます。ざっくりといえば,これだけの違いです。

 で,熱を生むのが火力の酸素による燃焼に対して,核分裂という核反応です。これは,ご存知の方も多いと思いますが,不安定な原子がふたつ以上の別の種類の原子に分裂する現象です。原子炉で使用されているのは,ウラン235中性子を吸収させて分裂を促す反応です。このとき,ふたつの原子(いろいろな原子になる可能性があります)に分裂するとともに中性子があらたに飛び出してきて,次の核分裂のきっかけになります。で,分裂する際にわずかに質量が失われ,この質量がエネルギーに変換されるのです。これを説明する式がアインシュタインによる相対性理論において導かれる有名な

  E=mc^2  ここで,E:エネルギー,m:質量,c:光速

です。

 

 

BWRとPWR

 さて,原子炉にもいろいろな種類があるのですが,その中でもメジャーなのが,沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)です。どちらも軽水(いわゆる普通の水)を使う軽水型原子炉です(※1)。

※1:核分裂を促す中性子は速度が遅い方がよいので,中性子の速度を減速させる働きをする物質を減速材といいます。また,核分裂によるエネルギーで高熱になる燃料棒等を冷却するとともに,熱エネルギーを運び出す役割をする物質を冷却材といいます。軽水型原子炉では,減速材と冷却材が共通で水(軽水)を使うというわけです。

    BWRは、炉の中で水を沸騰させて、炉から直接タービンに水蒸気を送ります。この方式を直接サイクルといいます。PWRと比べると構造が簡単ですみますが、放射能化された水蒸気をタービンに送ってしまうので、タービンも放射能化していまいます。

 BWRのアッパーバージョンとして,ABWRがあります。これは,通常のBWRに対して,制御棒の駆動方式に電動方式を追加したり,ポンプを炉内に収めたりしたものです。

    PWRは、炉の圧力を高くして、水の温度が高くなっても沸騰しないようにします。そして、高温高圧の水を蒸気発生器といういわゆる熱交換器に送り、そこで間接的に水蒸気を作り、タービンに送ります。この方式を間接サイクルといいます。したがって、タービンが放射能化されることはありません。一方で、高圧に耐えるように炉を頑丈に作る必要があることと、BWRと比べると構造が複雑になります。

 PWRのアッパーバージョンとして,APWRがあります。これは熱交換器の保有水量増加などの性能改善や機器の配置改善が行われたものです。

 

次回に続きます。