電気でぶ猫のつぶやき

電力系統を中心に,電気関係の記事や,電験などの電気関係の資格の話などをやさしくつぶやきます。

【電力系統】発電所(3)【水力発電所その1】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は水力発電所についてお話しようと思います。

水力発電

水力発電再生可能エネルギー

 水力発電は高きから低きに流れる水が水車を回すことで発電します。水車は火力発電でいうところのタービンに相当します(英語だと水車のことをhydro turbineといいますし)。で,水車と発電機は軸で結合されており,水車の回転エネルギーが発電機によって電気エネルギーに変換されます。

 上記の「高き」というのがポイントです。水の流れにおける運動エネルギーに変換される前のエネルギー形態は位置エネルギーです(ポテンシャルエネルギーともいいます)。

 すなわち,エネルギーの変換の流れとしては,

  水が持つ位置エネルギー⇒水の運動エネルギー⇒水車の回転エネルギー

  ⇒発電機による電気エネルギー

 ということになります。

 それでは,最初の位置エネルギーは誰が溜めてくれるのでしょう? それは地球がやってくれるのです(太陽の力を借りて)。ただし,後で説明する揚水発電所は違いますが。しかし,多くの水力発電では,位置エネルギーを溜めてくれるのは地球だお言っていいでしょう。発電で使われた水が下流に流れ,最後は海に流れ込み,太陽の光で温められて蒸発し,雲を作って雨になり,上流に戻ってくる――。そういう大いなる循環によって,最初の位置エネルギーが賄われているのです。

 この意味で,水力発電自然エネルギー再生可能エネルギーだといえます。

 で,けっこう良いことづくめに聞こえるかもしれませんが,残念ながら,環境アセスを含めていろいろな条件から建設できる場所が相当限定されるのです。

 

 

水力発電所の種類

  まず,ダムを持つ発電所と持たない発電所があります。

 ダムを持たない発電所は,川の流れをそのまま水車に引き込んで回転力に変換します。これは流れ込み式または自流式と呼ばれます。ダムがないので,水が多い時期(豊水期)はすべての水を利用することができず,水が少ない時期(渇水期)には発電量が少なくなるという欠点があります。一方で,建設コストが比較的抑制できることがメリットですが,流れ込み式の発電所にはもっと重要な役割があります。

 実は,一般の発電所は電気がこないと運転ができないという,自家撞着ともいうべき性質があります。その点,流れ込み式の発電所は外部から電力を得られなくても運転開始できるのです。この特性から,電力会社の管内全域が停電(いわゆるブラックアウト)した場合,復旧のための最初の起点(ブラックスタート)に使用されるのが流れ込み式の水力発電所なのです。

 次にダムを持つ発電所ですが,調整池式,貯水池式,揚水式などがあります。調整池式発電所は,河川の流量が一定でも,発電機の出力をそのときの状況に合わせて変えなければならない水力発電所に適用されます。発電機出力を小さくしなければならないときは,調整池に水を貯え,発電機出力を大きくしければならないときは溜めた水を放出して対応します。

 貯水池式発電所は,季節によって変化する河川の流量に対して,年間通じて一定の出力をするために用いられます。すなわち,大きな貯水池を用いて,豊水期には水をため,渇水期にはそれを放水することによって,出力を一定に保つことができます。

 揚水式については,トピックが多いので,項を別にして説明します。

 

 水力発電所の記事は思ったより長くなりそうです。次回に続きます。