電気でぶ猫のつぶやき

電力系統を中心に,電気関係の記事や,電験などの電気関係の資格の話などをやさしくつぶやきます。

【電力系統】有効電力と無効電力(1)【まずは有効電力】

 みなさん,こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は,有効電力と無効電力について語りたいと思います。

無効電力はわからん!

 有効電力ってなんとなくわかる気がするのではないでしょうか? 一方で無効電力となると,一気にわからなさ加減が増す気がします。私もほんとうに細かいところになると,未だに理解が曖昧な気がします。

 それでも,最小限度理解・整理しておかないと,今後の記事の説明に支障が出るので,頑張って説明してみます。

直流の場合

 電圧すなわち電位差E[V=J/C]が電流すなわち単位時間あたりの電荷I[A=C/s]に対してする仕事Pを考えると([ ]は単位を表します),

   E×I=P[J/s=W]  ……(1)

 となります。この1秒間当たりの仕事もしくはエネルギーを電力といい,単位は[W(ワット)]です。

 直流の場合は,これ以上そんなに話はありません。有効も無効もなく,性質としては有効電力に近いものになります。

有効電力

  交流の場合も,電力が(1)式で表されることに変わりはないのですが,交流の場合,電圧,電流に位相(三角関数の引数もしくはその一部を位相と呼びます)があります。特に電圧と電流の位相がまったく同じ場合と,電圧に対して電流の位相が90°異なっている場合とで,電力の性質がまったく異なってしまいます。

 この項では,電圧と電流が等しい場合を扱います。この場合の電力が有効電力になります。

 式を簡単にするために,実効値×√2で振幅をあらわします。後で三相の話も考えるために,a相の相電圧Ea,電流Iaを考えます。

  Ea=√2Ecosωt

  Ia=√2Icosωt

ここで,ωは角周波数でω=2πf,fは周波数です。

 a相の電力をPaとすると,

  Pa=Ea・Ia=2EI(cosωt)^2

       =2EI(1/2)(1+cos2ωt)

                         =EI+EIcos2ωt              ……(2)

 ここで,高校で習う三角関数の公式:

  (cosA)^2=(1/2)(1+cos2A)

をつかっています。

 

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 (2)式を見ると,PaはEIを中心に0から2EIまで交流の振動数の2倍の振動数で振動する形になっており,Pa≧0です。すなわち,例えば負荷の向きに電流の正の向きをとるとすれば,電力=単位時間あたりのエネルギーは負荷で消費されるということになります。このような性質をもつ電力を有効電力と呼んでいます。また,その大きさは(2)の1周期の時間平均を取って,

  <Pa>=EI

として定めます。<>はここでは平均値の意味で用いています。

 次にb相とc相についても同じように電力を計算してみましょう。b相はa相よりも位相が120°=2/3π遅れるのですから,

  Eb=√2Ecos(ωt-2/3π)

  Ib=√2Icos(ωt-2/3π)

となります。したがって,

  Pb=Eb・Ib=2EI{cos(ωt-2/3π)}^2

       =EI+EIcos(2ωt-4/3π)  ……(3)

 同様にc相では,

  Ec=√2Ecos(ωt-4/3π)

  Ic=√2Icos(ωt-4/3π)

となりますから,

  Pc=Ec・Ic=2EI{cos(ωt-4/3π)}^2

         =EI+EIcos(2ωt-8/3π)

                        =EI+EIcos(2ωt-2/3π)   ……(4)

       ∵cosの1周期は360°=2π[rad]だから。

(2)(3)(4)を加算して,3相合計の電力P3を求めると,

  P3=Pa+Pb+Pc=3EI

すなわち,3相合計すると,平均をとらなくても振動項が消えてしまうことになります(3つの振動項の加算が0になるのは,3相交流で電圧や電流が0になったのと同様の関係ですから,理解できると思います)。

 また,電圧を表す項としては,実効値のEだけが残っていますので,線間電圧をVとすると,V=√3Eの関係から,

 P3=√3VI

の形に表すこともできます。この辺りは,有効電力を測定する際に大事な関係式になります。

 

「有効電力と無効電力(2)」に続きます。