【電力系統】有効電力と無効電力(2)【無効電力とは】
こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。
前回は,主に有効電力についてお話しました。今回は主に無効電力についてお話します。
無効電力
ここでは,電圧と電流の位相がπ/2[rad]=90°異なっている場合を考えてみましょう。
すなわち,
Ea=√2Ecosωt
Ia=√2Icos(ωt-π/2)
となる場合のEaとIaの積,すなわち電力を考えてみます。この電力をQaとおきましょう。
Qa=2EIcosωtcos(ωt-π/2)
=2EI(1/2){cos(2ωt-π/2)+cosπ/2}
=EIcos(2ωt-π/2)=EIsin2ωt ……(1)
なお,cosAcosB=(1/2){cos(A+B)+cos(A-B)},cosπ/2=0,cos(Θ-π/2)=sinΘといった公式を使っています。
(1)式を見ると,三角関数の項しかないので,正の値と負の値を交互にとります。これは負荷の向きに電流の正符号を取るとすると,Qa>0のときはエネルギーが負荷に蓄えれれ,Qa<0のときはエネルギーが負荷から系統側に吐き出されてくることを意味します。このような場合の電力を無効電力といいます。
これは言い換えると,無効電力はエネルギーとして消費されない電力,もしくは物理学でいうところの仕事をしない電力ということになります。
なお,無効電力のエネルギーが出たり入ったりする動作から,無効電力のことを英語でreactive powerと呼ぶのではないでしょうか。一方で,日本では「仕事をしない」という視点たって,”無効”電力と訳したのかもしれません。
さて,(1)式からあきらかなように,Qaの平均値を取ると0になってしまいます。したがって無効電力の場合,有効電力のときのように,瞬時電力の平均値でもってその値を定めることはできません。そこで,無効電力の場合はその振幅EIをとって,無効電力の値とします。
また,次元(物理量を構成する基本単位の組み合わせ)は有効電力と同じなのですが,単位は[W]ではなく,[var](ヴァール)を用います。
遅相無効電力と進相無効電力
この概念もいろいろ流儀があってややこしいのですが,私の一連の記事では基本的に,負荷に向かって電流の符号を正としたとき,電圧に対して電流の位相が90°遅れているときの無効電力を遅相無効電力(上記の場合です),電圧に対して電流の位相が90°進んでいるときの無効電力を進相無効電力と呼びます。
進相無効電力の場合の(1)式に相当する式は,
Qa'=EIcos(2ωt+π/2)=-EIsin2ωt ……(2)
となります。無効電力の値としては,符号をひっくるめて,-EIとなります。
なお,どんなときに電圧に対して電流の位相が90°遅れるかというと,純粋なリアクトル負荷すなわち,負荷としてリアクタンスのみがある場合です。逆に電圧に対して電流が90°進むのは,純粋なコンデンサ負荷がある場合です。
この項,もう少しだけ続きます。
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