電気でぶ猫のつぶやき

電力系統を中心に,電気関係の記事や,電験などの電気関係の資格の話などをやさしくつぶやきます。

【電力系統】発電所(1)【同期発電機】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回から少しの間,電力系統を構成するいろいろな要素――発電所や変電所,さらにこれらを構成する機器などについて語っていこうと思います。

 まずは発電所から。

発電所の構成

 発電所は,ざくっというと,蒸気タービンやガスタービン,水車などの原動機,発電機,主変圧器,発電機を故障から守ったり回路の切り替えを行ったりする開閉器類(遮断器,断路器,接地開閉器等),発電機や原動機の制御装置および故障を検出して遮断器を動作させ機器を守る保護装置,各種補器,電気の通り道であるケーブルや母線などから構成されます。

発電機について

 火力発電所とか水力発電所というように,発電所は原動機の種類で分類されるので,これらの詳細はまた章を改めましょう。ここでは原動機は機械的回転力を生み出すものと考えてください。

 まずは発電機について。

 原動機と発電機の回転子は軸で結合されています。回転子は磁石です。風力発電のように永久磁石が用いられる発電機(永久磁石発電機)もありますが,多くは電磁石です。このような回転子では電磁石にするためのコイルがまかれています。そして,コイルに電流を供給するための仕組みがあり,これを励磁装置と呼んでいます。

 さて,回転子をぐるっと囲むように固定子があり,固定子にもコイルがまかれています。上で述べたように回転子は磁石ですから,回転子の回転によって,磁束が固定子のコイルを貫きます。この磁束がコイルを貫くことを磁束が鎖交するといいます。回転子の回転によってコイルを鎖交する磁束の量が変化します。すると固定子のコイルに電圧(起電力)が発生します。ファラデーの法則というやつですね。

 このコイルの端子に負荷がつながれば電流が流れだし,電力が供給されます。発電機は,主変圧器を経て系統に連系されるわけですが,系統も大きな負荷とみなすことができます。

 なお,発電機において,電力を取り出す方の部分を電機子と呼びます。ここまで述べたような発電機は固定電機子型といいます。対応して回転子から電気を取り出す回転電機子型の発電機も存在しますが,少数派です。

 固定子(電機子)には,三相分のコイルが,物理的に120°ずつ角度を持たせて配置されています。このように配置された三相のコイルに,例の三相交流電流が流れると,その電流がつくる磁束はω=2πf(f:周波数。50Hzか60Hz)の角速度で回転します。回転子の方はN極とS極のペアが一つだったり二つだったり,もっと多かったりしますが,ペアの数をPとすると,ωr=ω/Pの角速度で回転する必要があります。つまり,回転子の磁束がコイルの磁束と鎖交する回転速度と固定子側の回転する磁束のタイミングがあっている必要があります。これを発電機が同期しているといいます。また,このような発電機を同期発電機といいます。

 系統の周波数は一定に保たれています(※1)。そこで,ある発電所の発電機を考えると,発電機は,系統の周波数と回転子の磁石のペアの数できまる回転数(角速度)で回転する必要があります。そのためには,原動機が出力するパワーと発電機が系統に送り出すパワー(有効電力)が等しくなる必要があります。火力発電所水力発電所では,ガバナと呼ばれる制御装置で原動機の出力を調整し,回転速度が一定になるように調整しています(※1)。

※1:系統の周波数を一定に保つ仕組みや原動機の出力制御は,実際はもう少し複雑なことをやっています。これについては別の記事で説明します。

 また,上で述べた励磁装置を制御して,回転子のコイルに流す電流をコントロールすることにより,電磁石の磁気の強さを調整,結果として発電機の端子電圧を制御する制御装置をAVR(Auto Voltage Regulator)といいます。

 

 

 

 

【資格試験】立体角と平面角の関係式【機械,照明】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回はちょっと趣を変えて,私のメモ的な記事になります。

立体角と平面角の関係式

 「電気計算」という,電験やエネルギー管理士を目指す人向きの専門雑誌があるのですが,その2018年12月号を読んでいたら,照明関係の記事のところで,

  

f:id:Ralph0-7iaa:20190117234709j:plain……(1)

 なる公式が導出(証明)無しで載っていました。ここで,αが平面角で,Ωがそこから見込んだ立体角です。ステラジアン[sr]という単位をもっているやつですね(図1参照)。

f:id:Ralph0-7iaa:20190117235252j:plain

   図1 平面角と立体角

 

 私,電験などでも照明関係の問題は苦手で,この立体角関係もなんとなく避けて通ってました。とはいえ,いつまでも避けているのもなんとなく癪なので,ちょっと(1)式の導出を調べてみることにしました。で,その結果をここにメモっておこうと,今回の記事はそういう番外編的な記事です。

 

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立体角と平面角の関係式導出

  立体角Ω[sr]の定義は,一般には一般の曲面で定義するのですが,簡単のために半径rの球面で定義すると,球の中心から見込んだ球面の面積をSとすると,Ω=S/r^2です。

 半径1の球面で考えればr=1だから,Ω=Sとなります。

 平面角αの場合でいえば,この平面がぐるっと一回転して切り取る球面の面積がSすなわちΩです。Sを求めるには微小面積dSを積分して求めればよいです。

 球面座標での微小面積は図2から,

f:id:Ralph0-7iaa:20190118232701j:plain

f:id:Ralph0-7iaa:20190118232733j:plain……(2)

 

です。ここで,(2)式において,r=1として,0≦θ≦α,0≦φ≦2πの範囲で積分すればよく,

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となって,無事導出完了です。

 

 

【電力系統】有効電力と無効電力(3)【無効電力だって役に立つ】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 前々回は主に有効電力について,前回は主に無効電力について語らせていただきました。

 今回は,はじめに電力系統において,無効電力がどのように役立つのかを説明させていただきます。

無効電力と電圧降下

 図1を見てください。電源と負荷があって,送電線を思い切ってリアクトル分だけで近似した系統を示しています(ある程度電圧が高い送電線で距離が短ければ,そんなに的外れな近似ではありません)。

 

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        図1 電圧降下の説明図

 

 電源における電圧の「大きさ」をEs,負荷における電圧の「大きさ」をErとします。そして,電源と負荷における電圧の大きさの差:Ed=Es-Erが,送電線(リアクトル)における電圧降下になります。

 ここで,リアクトルのリアクタンスの大きさをXとすると,導入を省略して天下りに与えますが,次のような近似式が成り立ちます。

  Vd≒Qr・X ……(1)

 ただし,単位法(p.u.法)という単位で各量を表します。このp.u.法だけでひとつの記事になってしまうので,今は,例を示すにとどめます。例えば容量1000MVA(※1),定格電圧154kVをベースとしたp.u.法における値(p.u.値)を考えます。電圧が150kVであれば,

  150/154=0.974p.u. 

となります。なお,(1)式はEs,Erが1p.u.に近い値のときだけ成り立つ近似です。

※1:有効電力をP,無効電力をQとしたとき,√(P^2+Q^2)を皮相電力といい,その単位がVAです。M(メガ)は10^6を意味する補助単位です。

 無効電力が50Mvarであれば,

  50/1000=0.0500p.u.

となります。

 Xについては,まずベースのインピーダンス値(単位:Ω)を計算します。

  154^2/1000=23.716Ω

ですから,例えば20Ωであれば,

  20/23.716=0.84331≒0.843p.u.

となります。

 ついでに,Qr=0.0500p.u.,X=0.843p.u.のときのVdを計算してみると,

  Vd=0.0500×0.843=0.04215≒0.0422 p.u.

となります。

 さて,もう一度(1)式を見てください。

 無効電力は電圧とたいへん密接な関係にあることがわかります。例えば上の数値例では,50Mvarの遅相無効電力が負荷に流れこんでいれば,約4%の電圧降下を生じさせることができます。

 一般に,遅相無効電力が負荷に流れ込んでいる(遅相無効電力が負荷で消費されている)場合,負荷側の電圧を下げることができます。反対に進相無効電力が負荷に流れ込んでいる(進相無効電力が負荷で消費されている)場合,負荷側の電圧を上げることができます。

 このようにして,無効電力を上手に制御してあげることで,系統の電圧を適切な値に保つことが,系統を安定に運転する上で不可欠なのです。「無効」電力というなかなかひどい名前がついていますが,実際は電力系統にとってとても大切な役割を果たす物理量なのです。

 

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電圧と電流の位相差が90°ではない場合

  Ea=Ecosωt

  Ia=Icos(ωt-Θ)

の場合,

  有効電力:Pa=EIcosΘ

  無効電力:Qa=EIsinΘ

となります。

 また,上記の※1で少し説明したのですが,

  Sa=√(Pa^2+Qa^2)

            =√{EI^2・(cosΘ)^2+EI^2・(sinΘ)^2}

            =EI

を皮相電力といい,単位はVAを用います。もちろん次元 (物理量を構成する基本単位の組み合わせ)は,有効電力,無効電力と同じです。

 さらに,

  cosΘ=Pa/Sa

を力率といい,Θを力率角といいます。

 

【電力系統】有効電力と無効電力(2)【無効電力とは】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 前回は,主に有効電力についてお話しました。今回は主に無効電力についてお話します。

無効電力

  ここでは,電圧と電流の位相がπ/2[rad]=90°異なっている場合を考えてみましょう。

すなわち,

  Ea=√2Ecosωt

  Ia=√2Icos(ωt-π/2)

となる場合のEaとIaの積,すなわち電力を考えてみます。この電力をQaとおきましょう。

  Qa=2EIcosωtcos(ωt-π/2)

   =2EI(1/2){cos(2ωt-π/2)+cosπ/2}

   =EIcos(2ωt-π/2)=EIsin2ωt  ……(1)

なお,cosAcosB=(1/2){cos(A+B)+cos(A-B)},cosπ/2=0,cos(Θ-π/2)=sinΘといった公式を使っています。

 (1)式を見ると,三角関数の項しかないので,正の値と負の値を交互にとります。これは負荷の向きに電流の正符号を取るとすると,Qa>0のときはエネルギーが負荷に蓄えれれ,Qa<0のときはエネルギーが負荷から系統側に吐き出されてくることを意味します。このような場合の電力を無効電力といいます。

 これは言い換えると,無効電力はエネルギーとして消費されない電力,もしくは物理学でいうところの仕事をしない電力ということになります。

  なお,無効電力のエネルギーが出たり入ったりする動作から,無効電力のことを英語でreactive powerと呼ぶのではないでしょうか。一方で,日本では「仕事をしない」という視点たって,”無効”電力と訳したのかもしれません。

 

 

 さて,(1)式からあきらかなように,Qaの平均値を取ると0になってしまいます。したがって無効電力の場合,有効電力のときのように,瞬時電力の平均値でもってその値を定めることはできません。そこで,無効電力の場合はその振幅EIをとって,無効電力の値とします。

 また,次元(物理量を構成する基本単位の組み合わせ)は有効電力と同じなのですが,単位は[W]ではなく,[var](ヴァール)を用います。

遅相無効電力と進相無効電力

 この概念もいろいろ流儀があってややこしいのですが,私の一連の記事では基本的に,負荷に向かって電流の符号を正としたとき,電圧に対して電流の位相が90°遅れているときの無効電力を遅相無効電力(上記の場合です),電圧に対して電流の位相が90°進んでいるときの無効電力を進相無効電力と呼びます。

 進相無効電力の場合の(1)式に相当する式は,

  Qa'=EIcos(2ωt+π/2)=-EIsin2ωt  ……(2)

 となります。無効電力の値としては,符号をひっくるめて,-EIとなります。

 なお,どんなときに電圧に対して電流の位相が90°遅れるかというと,純粋なリアクトル負荷すなわち,負荷としてリアクタンスのみがある場合です。逆に電圧に対して電流が90°進むのは,純粋なコンデンサ負荷がある場合です。

 

 この項,もう少しだけ続きます。

 

 

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【電力系統】有効電力と無効電力(1)【まずは有効電力】

 みなさん,こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は,有効電力と無効電力について語りたいと思います。

無効電力はわからん!

 有効電力ってなんとなくわかる気がするのではないでしょうか? 一方で無効電力となると,一気にわからなさ加減が増す気がします。私もほんとうに細かいところになると,未だに理解が曖昧な気がします。

 それでも,最小限度理解・整理しておかないと,今後の記事の説明に支障が出るので,頑張って説明してみます。

直流の場合

 電圧すなわち電位差E[V=J/C]が電流すなわち単位時間あたりの電荷I[A=C/s]に対してする仕事Pを考えると([ ]は単位を表します),

   E×I=P[J/s=W]  ……(1)

 となります。この1秒間当たりの仕事もしくはエネルギーを電力といい,単位は[W(ワット)]です。

 直流の場合は,これ以上そんなに話はありません。有効も無効もなく,性質としては有効電力に近いものになります。

有効電力

  交流の場合も,電力が(1)式で表されることに変わりはないのですが,交流の場合,電圧,電流に位相(三角関数の引数もしくはその一部を位相と呼びます)があります。特に電圧と電流の位相がまったく同じ場合と,電圧に対して電流の位相が90°異なっている場合とで,電力の性質がまったく異なってしまいます。

 この項では,電圧と電流が等しい場合を扱います。この場合の電力が有効電力になります。

 式を簡単にするために,実効値×√2で振幅をあらわします。後で三相の話も考えるために,a相の相電圧Ea,電流Iaを考えます。

  Ea=√2Ecosωt

  Ia=√2Icosωt

ここで,ωは角周波数でω=2πf,fは周波数です。

 a相の電力をPaとすると,

  Pa=Ea・Ia=2EI(cosωt)^2

       =2EI(1/2)(1+cos2ωt)

                         =EI+EIcos2ωt              ……(2)

 ここで,高校で習う三角関数の公式:

  (cosA)^2=(1/2)(1+cos2A)

をつかっています。

 

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 (2)式を見ると,PaはEIを中心に0から2EIまで交流の振動数の2倍の振動数で振動する形になっており,Pa≧0です。すなわち,例えば負荷の向きに電流の正の向きをとるとすれば,電力=単位時間あたりのエネルギーは負荷で消費されるということになります。このような性質をもつ電力を有効電力と呼んでいます。また,その大きさは(2)の1周期の時間平均を取って,

  <Pa>=EI

として定めます。<>はここでは平均値の意味で用いています。

 次にb相とc相についても同じように電力を計算してみましょう。b相はa相よりも位相が120°=2/3π遅れるのですから,

  Eb=√2Ecos(ωt-2/3π)

  Ib=√2Icos(ωt-2/3π)

となります。したがって,

  Pb=Eb・Ib=2EI{cos(ωt-2/3π)}^2

       =EI+EIcos(2ωt-4/3π)  ……(3)

 同様にc相では,

  Ec=√2Ecos(ωt-4/3π)

  Ic=√2Icos(ωt-4/3π)

となりますから,

  Pc=Ec・Ic=2EI{cos(ωt-4/3π)}^2

         =EI+EIcos(2ωt-8/3π)

                        =EI+EIcos(2ωt-2/3π)   ……(4)

       ∵cosの1周期は360°=2π[rad]だから。

(2)(3)(4)を加算して,3相合計の電力P3を求めると,

  P3=Pa+Pb+Pc=3EI

すなわち,3相合計すると,平均をとらなくても振動項が消えてしまうことになります(3つの振動項の加算が0になるのは,3相交流で電圧や電流が0になったのと同様の関係ですから,理解できると思います)。

 また,電圧を表す項としては,実効値のEだけが残っていますので,線間電圧をVとすると,V=√3Eの関係から,

 P3=√3VI

の形に表すこともできます。この辺りは,有効電力を測定する際に大事な関係式になります。

 

「有効電力と無効電力(2)」に続きます。

 

  

 

【電力系統】送電線はなぜ3本セット?(その2)【三相交流】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 前回は,鉄塔における送電線が3本セットであることをお話ししました。これは鉄塔の送電線に限らず,身近な電柱の線(配電線ですね)でも同じことです。

 今回はなぜ送電線が3本セットになっているかについてつぶやこうと思います。いつもより,少し難しいかもしれません。

三相交流

  まず,単相交流回路について簡単に説明します。図1を見てください。

 

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       図1 単相交流回路

 電源の上側からリアクトル(いわゆるコイルの性質をもつものと思ってください)を経て,負荷に電流が流れ込む経路を便宜上,往路,負荷の下側から電源に戻る経路を便宜上復路としました。交流ですから電流の向きは矢印の向きだったり,反対の向きだったりします。

 この単相交流回路を3つ考えて,組み合わせ,復路を1本にまとめたものが図2です。こういうのを三相四線式といいます。

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       図2 三相四線式

 

 さて,図2において,1本1本をそれぞれ「相」といい,各相にA相,B相,C相と名前を付けます。そして,A相に流れる電流をIA,B相に流れる電流をIB,C相に流れる電流をICと呼ぶことにします。

 交流の電流は(電圧も同じですが)三角関数で表すことができます。もし,今,IA,IB,ICが次のような式で表されるような関係になっていたとしたらどうでしょう?

  IA=Icos(2πft-φ)

       IB=Icos(2πft-φ-2/3π)

  IC=Icos(2πft-φ-4/3π)

 ここで,Iは電流の振幅,fは周波数,tは時間,φは例えば電圧を基準にした電流の位相です。

 すなわち,IA,IB,ICは,その振幅が等しく,IBはIAより2/3π[rad]=120°位相が遅れており,ICはIBより120°位相が遅れているわけです。(※1)

 式を簡単にするために,α=2πft-φとおきます。すると上式は,

  IA=Icosα

  IB=Icos(α-2/3π)

  IC=Icos(α-4/3π)

IBとICに,高校で習った数学を思い出して,cos(A-B)=cosAcosB+sinAsinBの公式を適用すると,

  IB=-0.5Icosα+√3/2Isinα

  IC=-0.5Icosα-√3/2Isinα

となるので,IA+IB+IC=0となります!!

 

 

 すなわち,※1の性質をもつ三相交流電流は三相分足すと0になるのです。これは電圧でも同じことです。

 さて,そうなると,図2の三相の結節点のところの電流が0になりますので,復路が不要になり,

 

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        図3 三相三線

 

図3に示す三相三線式で,電力が送れることになります。 もともと,6本や4本の送電線が必要だったものが3本で済むのですから,コスト的にも大きなメリットがあります。これが送電線が3本セットになっている理由なのです。

 ところで,三相の振幅がまったく等しい状態というのは理想的なものであり,実際は少しずつ異なっているのが普通です。この場合,三相合計して余った分は地面や架空地線を流れます。

電圧について

 今回は説明の都合上,電圧は基準点と相の間の電圧である相電圧で扱いました。しかし,通常電圧は相と相の間の電圧である線間電圧で定義されます。500kVとか275kVとかは線間電圧の実効値(振幅を√2で割った値と思ってください)なのです。

 また,線間電圧は相電圧よりも√3倍大きくなります。

一般家庭のコンセントは単相です

 一般家庭の100Vや200Vは三相ではなく単相です。配電線の2相から単相変圧器で,100Vと200Vを作って供給されています。

 

 では,今回はこのあたりで。


 

【電力系統】送電線はなぜ3本セット?(その1)【交流,直流,送電線構成】

みなさん,こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

今回は,送電線はなぜ3本セットになっているかについて,お話しようと思います。

電力系統で使用される電圧・電流は基本交流

 電気回路にかかる電圧および流れる電流には,符号が変化しない直流と符号が正負に変動する交流があります。電力系統も電気回路の一種ですので,交流か直流のどちらかが用いられます。

 電力系統で用いられる場合,直流も交流もそれぞれ長所・短所を持つのですが,以下に述べるような利点から,多くの部分が交流です。

(1)変圧(電圧を変えること)が容易(変圧器で変圧が可能。直流だと,DC-DCコンバータを用いるなど,相当面倒なことになります)。

(2)系統故障時の遮断が容易。故障が起きた時,遮断器で故障電流を遮断する必要があるのですが,系統に与える衝撃を最小限にするように遮断するには電流が0になったときに切る必要があります。交流ならば正負を変動するので,自然に電流が0になる点がやってきます。

 電力系統でも,一部直流が使われているのですが,これについてはまた別の記事でお話します。

 なお,負荷については,直流が使われているものがけっこうあります。特に家庭にあるような負荷は直流で動くものが多いと思います。これらはダイオード整流器などを用いて,交流から直流に変換して電気を使っています。

鉄塔の送電線構成

 さて,鉄塔を眺めてみると,いろんなタイプがあるんですが,送電線が6本のものを多く見かけると思います。もしかして,7本や8本に見えるという人もいるしれません。しかし,鉄塔の天辺に張られている1本ないし2本の線は送電線を雷から守るためのシールドの役目をしている架空地線と呼ばれている線で,電力を運ぶ役割の線ではありません。

 で,6本の送電線の場合を例に取ると,あれは3本一組の送電線が2セットで構成されたものなのです。

 大きな鉄塔だと,送電線が9本とか12本のものもみかけます。これらは併架といって,異なる電圧の送電線がひとつの鉄塔についている場合が多いのですが,この場合でも3本一組が3セットないし4セットあるということになります。

 では,なぜ送電線の構成は3本一組のセットから成るのでしょう? それは次にお話する三相交流というものに関係します。

 ちょっと長くなりそうなので,次回に続きます。