電気でぶ猫のつぶやき

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【電力系統】発電所(9)【風力発電所】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

  今回は再生可能エネルギー四天王(ラルフ0が勝手に呼んでいるだけです(^^;)のひとつである風力発電所について語りたいと思います。

風力発電所

概要 

 風,すなわち空気の運動エネルギーを風車の翼で回転エネルギーに変換し,これから先はいつもと同じで発電機が電気エネルギーに変換します。典型的な自然エネルギー再生可能エネルギーです。

 風車にもいろいろなタイプがありますが,多く使われえるのは皆さんが風車というと頭に描くであろう,3枚翼のタイプがいちばんよくつかわれます。

 また,発電機を含む電気部分もいろいろな種類があります。なにせ,まさしく「風まかせ」なので,発電機の回転数が一定しません。すると普通の同期発電機をそのまま使ったのでは,系統との同期が取れなくて困ってしまいます。そこで,種々工夫がなされているわけです。この記事では風力発電所の電気部分について代表的な3種類について説明します。

 ひとつめはかご型誘導発電機を使うタイプです。かご型誘導機は,電機子に流れる電流が作る回転磁束がかごを編んだような形をしている回転子と鎖交することで,回転子に電流が流れ界磁磁束が誘導されるものです。このとき,回転子の回転速度が同期速度になってしまうと,回転子を鎖交する磁束が時間変化してくれなくなり,界磁磁束が作れません。そのため,誘導機は必ず同期速度とは異なる速度で回転しています。そして,同期速度よりも回転速度が遅い場合は誘導電動機になり,同期速度よりも回転速度が速い場合は誘導発電機になります。

 つまり,同期速度よりも速い回転速度であれば,速度が変動してもかまわないわけで,風力発電用の発電機として用いられます。なお,起動時に突入電流と呼ばれる大きな電流が流れることと,必ず遅相無効電力を消費することに注意しなければなりません。遅相無効電力の消費に対しては,コンデンサを発電機と並列に接続して調整しています。これらの注意点から,あまり容量の大きい発電所には用いられていません。

 ふたつめは,DFIG(Doubly-Fed Induction Generator)を用いるタイプです。これは,水力発電所のところで説明した可変速発電機とほぼ同じものです。すなわち,誘導機ではあるのですが,回転子に三相の巻き線を120°ずつ空間的にずらして配置し,パワーエレクトロニクスを用いた周波数変換装置により低周波三相交流を流して,低周波数で回転する界磁磁束を生じさせます。こうすることで,回転子の回転速度が同期速度と異なっても界磁磁束は電機子磁束と同期をとることができるのでした。以上の仕組みで風力発電機における速度変動に対応しています。

 DFIGの場合は,起動時に突入電流が流れることもないし,無効電力を制御することもできるので,中容量(2MWくらい)までの風力発電所によく採用されます。

 みっつめは,DCリンク方式と呼ばれるタイプです。発電機には界磁回路を必要としない永久磁石発電機(PMG)を用い,電機子側にパワーエレクトロニクスによる周波数変換装置を設置します。周波数変換装置はコンバータ(レクティファイア)が交流を直流に変換します。そして,インバータが直流を交流に変換し,系統と連系します。直流(DC)を介して連系するので,「DCリンク」方式というわけですね。なお,このコンバータ,インバータを合わせてPCS(Power Conditioning System)と呼びます。

 制御の自由度が大きいことが効いているのか,比較的大容量(4MW以上)の風力発電所によく採用されます。

 

 

風力発電機の回転数とギア

 上記みっつの方法のどれでもそうなのですが,風力発電機の特徴のひとつとして,原動機に相当する風車と発電機が直接一本の軸で接続されるのではなく,ギアを介した接続になることがあります。

 というのは,風車の回転数は,せいぜい1分間に数十回です。これをそのまま発電機につなぐことを考えると,極対数(発電機回転子の磁石のNS極のペアの数)が100とかなって,現実的ではありません。そこで,風車と発電機の間にギアをかまして増速しています。風力発電用の発電機の極対数は2~4くらいが選択されています。

 

 では,今回はこのあたりで。