電気でぶ猫のつぶやき

電力系統を中心に,電気関係の記事や,電験などの電気関係の資格の話などをやさしくつぶやきます。

【資格試験】電験三種の勉強(4)【機械】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 ここ数回は,電験三種の勉強について語っています。 今回は「機械」ですね。

機械の勉強

 繰り返しになりますが,すべての科目に共通して,勉強の中心は「過去問を解くこと」です。

 

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    過去問を解くなかで,自分の得意な問題,苦手な問題を見いだしていきましょう。

    さて、機械の問題は、電力と比べると歯ごたえがあるように感じるのではないかと思います。「機械」ですから,主に様々な機械(と制御やプログラム)に関する問題が出るわけですが,計算問題にせよ,論説問題にせよ一歩踏み込んだベース的知識が要求されます。

 例えば,同期発電機に関する問題で,定格電流In,短絡電流Is,p.u.値の同期インピーダンスZの間に,Z=In/Is の関係があること,界磁電流は三相短絡電流に比例することを理解して覚えておく必要がある問題が出たりします。

 ある程度手ごたえがあることを御理解いただいた上で,出題の傾向を見ていきましょう。

 まずは回転機。直流機,誘導機,同期機と万遍なく出ます。計算問題としては,直流機では特性に関するもの,ついで誘導起電力の計算が出ます。誘導機では出力(電力)とトルクの関係,二次入力と二次銅損と出力とスリップとの関係に関する出題が多いように思えます。同期機では,上で述べた同期インピーダンスに関するもの,ベクトル図を用いた回路計算などがよく出ています。論説問題では,まず回転機それぞれの特徴に関するものがあります。直流機ではトルク,速度特性をはじめとした各特性に関する問題が多いようです。誘導機では基本特性,かご型と巻線型の比較などが多く,始動や速度制御,インバータ駆動などもたまに出るようです。同期機では,電動機のV曲線,始動方法などが多めのようです。

 変電機器としては,変圧器が圧倒的。計算問題としては,電圧変動,損失・効率,各種結線の基本特性に関するものが多いです。論説問題としては,これが多いというのはないので,なるたけ過去問で経験値を上げて対応しましょう。

 パワエレも問題の種類がばらついています。かろうじて計算問題では,インバータの動作波形に関するものと,直流チョッパのデューティと出力に関するものが多い傾向です。論説問題では,完全に傾向がばらついています。変圧器の場合と同様,過去問での経験値アップが重要になります。

 照明と電熱はマスターが比較的たいへんな上に,出題頻度がやや低めなのと,出ても選択問題として出されることが多いので,時間が無ければ捨ててもかまわないと思います。

 自動制御も電験三種ではあまり出題率が高くないのですが,二種以降を視野に入れる場合重要度が上がるので,勉強する価値があります。計算問題としては,ブロック線図の等価変換,一次遅れ要素のボード線図など。論説問題としては,シーケンス制御系およびフィードバック制御系の概要に関する問題が多いです。

 情報ですが,自動制御と同じくらいの出題頻度です。計算問題としては,圧倒的に論理回路の真理値表と論理式に関するものが多いです。つづいてn進法ですね。論説問題では,プログラミングやフローチャートに関するもの,メモリに関するものが多いですね。まあ,照明,電熱同様,肌に合わなければ捨てるのも可。

 最後に機械科目のサブテキストを紹介しましょう。

 ます,次の本が,回転機(直流機,誘導機,同期機),変圧器,パワエレをカバーしています。

 

電気機器

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 上記の本は,パワエレ部分が正直なところやや微妙なので,パワエレについては,次の本がよいかもしれません(ここまでするか,という話もありますが)。

 

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 照明,電熱については,捨てることを推奨していまいましたが(^^;),取り組む場合は,以下の本が良いと思います。

 

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  制御については,電験三種から使える本となると,なかなか無いのですが,かろうじて次の本が良いのではないでしょうか?(本としてはとても良いです。単に試験対策でなく,制御工学の入門書としては,とてもお奨めできる本だと思います)。つい最近第2版が出たばかりです。

 

はじめての制御工学 改訂第2版 (KS理工学専門書)

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  情報に関してはすいません。お奨めできる本を知りません(^^;)。過去問の研究で頑張ってください。

 

 今回は以上です。次回は「法規」ですね。ではまた。

 

 

  

【資格試験】電験三種の勉強(3)【電力】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 電験三種の勉強について,今回で3回目ですね。今回は「電力」科目の勉強を語りたいと思います。

電力の勉強

 理論のところでも述べましたが,勉強の中心は「過去問を解くこと」です。これはどの科目も共通です。したがって,メインテキストも理論とほとんど変わらず,以下のようなものになります。

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 そして,前に述べたように,電力は他の科目より比較的やさしいですので,ある程度バックグラウンドがある場合は勉強にかける時間配分は少な目にして,ささっと通り過ぎたいところです。しかし,バックグラウンドが少ない人は,そうもいっていられないので,ある程度丁寧さを要求されるでしょう。とはいっても,他の科目より若干楽なのは同じだと思います。

 ただし,電験三種は近年難易度が上がっています。ラルフ0はその原因のひとつが計算問題の増加だと思っているのですが,電力もその例外ではありません。中には「これ,理論の問題じゃねぇの?」というような問題が電力で出たりします。例えば,電力ケーブルの静電容量に関する問題なんて,ケーブルであるというくびきをはずして一般化すれば,理論に出てもおかしくない問題です。しかし,これは裏を返せば,理論をしっかり勉強していれば,電力の得点力にもつながるといえます。

 さて,少し詳細に電力科目の問題の傾向を眺めてみましょうか。

 まずは発電所から。水力発電所の問題では,使用水量,落差,損失水頭,発電機効率,水車効率から発電電力を計算させる計算問題が定番ですね。論説問題では,水車の種類と用途に関する問題や水車の構造に関する問題も押さえておきたいところです。

 火力発電所の問題では,計算問題では,燃料使用量,出力電力量,熱効率の問題が出題率が高いです。論説問題では,火力発電所の構造に関する問題や各種熱サイクルに関する出題が多いように思われます。

 原子力発電所の問題は出題されることが少ないのですが,計算問題ではアインシュタインのE=mc^2の式が鍵ですね。2年くらい前に,原子力発電と揚水発電の融合問題が出ましたが,難易度もほどほどで良問だなと感心しました。論説問題では,BWRやPWRの構成,特徴に関する問題が多いと思います。

 変電に移りましょう。計算問題ではパーセントインピーダンスや短絡故障に関する問題が多いです。論説はこれといって偏りがなくいろいろな分野から万遍なく出ています。変圧器,遮断器,避雷器,調相設備といったところを一通り押さえましょう。

 送電,配電については,計算問題としては,電圧降下,送電電力,線路損失あたりの問題が圧倒的に多いイメージです。あと,送電線のたるみの計算式:D=(wS^2)/(8T)というやつですね。過去問に必ずあるはずなので,チェックしてください。この計算は法規に出る場合もあるので,要注意です。論説問題については,範囲が広すぎてここには書ききれないほどです。過去問をなんどかさらって,類題に対応できるようにしておくのがベストだと思われます。

 電力分野におけるサブテキストを紹介しておきましょう。例によって,三種を対象と考えるとややレベルが高い可能性がありますが,

 

発電・変電

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このあたりが適切だと思います。

 

 次回は,「機械」ですね。それでは,また。

 

 

【資格試験】電験三種の勉強(2)【理論】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 前回は電験三種の試験科目等について概略を述べました。今回は,いよいよ合格するためにどんな勉強が必要か,といったところを語りたいのですが,ちょっとその前に――。

科目毎の難易度

 理論,電力,機械,法規のうち,難しいのはどれか? どんな順番で難易度が高いのか? ということです。

 これはいろいろな意見があるようだし,受験する人のバックグラウンドによっても変わってきます。

 この前,ぱらぱらとネットをみていたら,「法規,機械,理論,電力」の順で難しいという記述を見ました。これはこれで「なるほどね」と思わせるものがあります。しかし,ラルフ0の意見としては,最も平均的なバックグラウンドを考えた場合は,「理論,法規,機械,電力」の順ではないかと思います。数学大好き,計算大得意,といった一部の人を除くと,計算問題が多い理論はやはり難関です。ほとんどが計算問題ですから。

 法規は,慣れない法律の内容をある程度咀嚼して覚えなければならないことと,計算問題も対象が他の科目と趣が違うのです。そういう意味ではやっかいです。

 ちなみに,大学とかで物理学を専攻した経験があると,順番が変わって「法規,機械,電力,理論」となりますね。物理関係の人は,電磁気学は必修ですから,相当鍛えられています。電験三種レベルの理論は,そういった人にはかなりおいしい科目になります。かくいうラルフ0がそうだったんですけどね。もっとも年月がたってしまった今ではそこまで自信はありません。

理論の勉強

  まず,理論に限らず他の科目も同様なのですが,勉強の中心になるのは「過去問を解くこと」です。ある意味身も蓋もないんですけど。

 学校での勉強では,まず教科書を勉強して,仕上げに演習問題を解く,という流れが多かったと思うのですが,資格取得のための勉強としては,それはあまり効率がよろしくないです。

 バックグラウンドとして,電験に出るような項目をまったく勉強したことがないという人であれば,少し話が違うのですが,電験を受験しようという多くの人は,多かれ少なかれ電験に出るような項目に触れたことがあると思われます。だとすれば,まず過去問にあたってみて,自分が何ができて何ができないかを知ることが早道です。

 また,過去問の類題が出題されることが多いことも電験のみならず,多くの資格試験に共通する特徴です。その意味からも過去問を研究することは非常に重要なのです。

 ですから,勉強の方法としては,まず過去問を解いてみる。答え合わせをするとともに,過去問集には必ずといってよいほど解説が載っていますから,解説を読む。それで理解できればまずその問題はOKで,最初に解いたときに間違った,あるいはわからなかったのであれば,もう一度解いてみる。そして解説をを読んでわからなかったときに,はじめて教科書や専門書を読むのです。教科書や専門書はあくまでサブテキストであり,メインは過去問集です。

 で,過去問集を可能であれば3周もすれば,合格に十二分な実力がついているはすです。

 過去問集とはいってもそのものずばり,過去問を年代順に集めたものもあれば,過去問を材料に項目ごとに編集しなおしてテキストにしているものもあります。例えば,

 

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などがありますね。これ,どちらのタイプがよいかというと,科目別に分かれている方が解説が詳しくてよいという意見も聞きますが,ラルフ0はどちらも状況によってありだと思います。ある程度バックグラウンドが豊富で試験勉強に掛けられる時間が少ない場合など,科目別でないタイプを選択するのもありだと考えます。

 さてメインテキストの解説だけではよくわからないとか納得がいかないとか(これ,人によっては本当に気持ちが悪い状態だと思います),そういったときはサブテキスト――教科書や参考書をあたらなければならないわけですが,理論の場合どんなものがあるでしょうか。

 まずは電磁気学ですが,次の本がよいと思います。

 

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  電験三種は大学レベルの知識は必要としないので,大学初学年向きのこのテキストはややレベルが高いかもしれませんが,たいへん丁寧に説明してあるので,読めないということはないと思います。

 次に回路理論ですが,次の本がよいでしょう。

 

基礎からの交流理論

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 交流理論といいつつ,直流から話が始まります。説明は丁寧で置いてけぼりにされるようなことはないと思われます。

 測定に関しては,電験三種という視点から見ると,なかなかよい本がありません。ある意味電験の過去問集がいちばんよいかもしれない。ここではサブテキストを紹介しているのですから,それでは答えにならないのかもしれませんが,電験の過去問の開設からサブノートを作って,そのサブノートがいちばんのサブテキストになるかと思います。

 半導体に関しても,いろいろな視点からずいぶんたくさんの本が出ていて,なかなかこれっという本を指定しにくいのですが,かろうじて次の本がよいのではないかと思います。

 

はじめての電子回路15講 (KS理工学専門書)

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 理論に関して最後にですが,理論ってある意味電験の基礎です。まずは理論をきちっと勉強しておくと,他の科目にある程度ですけど,応用が効くんです。後の記事で述べるように,理論の勉強が電力の問題に適用できたり,機械を理解しやくしたりします。また,電力における知識が法規に効いたりもします。そう考えると理論がすべての科目のベースに位置していることがわかります。

 それでは今回はこのあたりで。次回は「電力の勉強」からですね。 

 

 

【資格試験】電験三種の勉強(1)【試験科目とか】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 発電所の話が一区切りついて,次は変電所の話――と続くところですが,今回から何回か少し寄り道して,電験三種の試験勉強について語ってみたいと思います。

電験って?

 御存知の方が多いと思うので,あえて説明するのもなんなのですが,一応念のため。

 正式には電気主任技術者試験といいます。電気主任技術者の資格を得るための国家試験ですね。通称「電験」です。

 電気主任技術者とは,事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、設置者が電気事業法上置かねばならない電気保安のための責任者です。電気工作物とは、発電・変電・送電・配電または電気使用のために設置する機械・器具・ダム・水路・貯水池・電線路その他の工作物であると定義されています。

 電気主任技術者には,一種,二種,三種とあって,取り扱える電圧階級が違います。一種は取り扱える電圧階級に制限がありません。二種は170kV未満,三種は50kV未満の電圧階級を扱うことができます(三種にはこの他発電所における出力の制限があります)。当然試験も一種がいちばん難易度が高く二種,三種なるにしたがって易しくなります。

 とはいっても,三種でも舐めて受かるような難易度ではけしてないです。翻って,後述するように,きちんと勉強すれば,どんなバックグラウンドの人でも手が届かないような難易度でもありません。ただし,その人のバックグラウンドによって,必要な勉強量,勉強時間が変わってくるのも事実です。

 

 

電験三種の試験科目

 電験一種,二種は,一次試験に合格後,二次試験があるのですが,三種は一次試験のみです。そして一次試験は選択式(マークシート)です。これだけでずいぶん気が楽になります。一種,二種も一次試験はマークシートなのですが,二次試験が筆記なのです。これでかなり難易度が跳ね上がります。

 一次試験の科目は,理論,電力,機械,法規の4科目です。科目合格制が取られていて,3年間で各科目に合格すればよいのです(3年すぎると,最初の年に合格していた科目合格が無効になります)。なので,1年で全科目合格することも決して不可能ではないのですが,2年~3年かけてじっくり取り組むのも悪くない方法です(変に欲張るより,効率がよいかもしれません)。なお,各科目60点を超えれば合格といわれています。100点満点を狙わないのも大事なコツのひとつです。

 各試験科目の内容を説明しましょう。

 

 理論は,ぶっちゃけ,ほぼ物理学でいうところの電磁気学および回路理論です。電磁気学でも回路理論は少し出てくるので,電磁気学では扱わない三相交流回路などを付け加える感じ。

 この他,電気計測,半導体等の問題もでますが,電磁気学および回路理論と比較すると出る問題は少な目なのと,半導体等の問題は選択問題になっていることも多いです。

 計算問題の比率が多いのも理論の特徴です。8割~9割が計算問題です。

 

 電力は,いわゆる発送配変電です。発は各種発電所。特に火力発電と水力発電の問題が多いです。これに比べる原子力発電の問題は少ないです。それなりにはでますけど。なお,昨今の状況を受けてと思われますが,太陽光発電など再生可能エネルギー,新エネルギーの問題が増える傾向にあります。

 送は送電。送電線の話だったり,送電電力や損失,電圧降下の問題等です。

 配は配電。スポットネットワークとか,単相3線式配電線とか,中性点接地方式とか,けっこう幅広い題材を扱います。三種はその扱える電圧階級から,配電と関係が深くなりがちなので,それなりに力が入りがちだと思われます。

 変電は,変電(^^;)。変電という言葉の定義は,変電所の記事で詳しく述べようと思います。ここでは,変圧器,遮断器の問題だと思ってください。変圧器や遮断器の問題は機械の方でも出るのですが。

 電力における計算問題は,近年増える傾向にあるようです。昨今では4割から5割くらいでしょうか。

 

 機械は,発電機,誘導電動機,直流電動機といったいわゆる回転機,変圧器,遮断機といった静止器,パワエレ機器,照明,電熱,そして自動制御等の問題が出ます。自動制御については,三種レベルだと問題が作りにくいのか,あまり目につかない気がします。また,照明は選択問題になることが多いと思います。

 機械についても計算問題が近年増える傾向にあるようです。昨今では6割くらいだと思われます。

 

 法規は,法律と施設管理についての問題です。法律は範囲が広いのですが,メインになるのは,電気事業法と電気設備技術基準およびその解釈です。なお,電気設備技術基準は略称「電技」と呼ばれ,実務において実に重要。

 施設管理は,需要率・負荷率・不等率の問題や配電線の短絡故障,地絡故障の問題などがよく出ているようです。

 法規についても計算問題が増える傾向です。昨今では3割から4割くらいだと思われます。

 

 電験三種は,近年難易度が上がっていると言われます。それは上記したように,計算問題の比率が増えていることと無関係ではないと思います。

 理論は昔から計算問題がほとんどでしたが,他の科目はラルフ0が三種を合格したころ(もう20年前になりますが)と比べると,計算問題が確かに増えています(※1)

※1:ラルフ0は,自己啓発的な意味と趣味的なものから,『電気計算』などの専門雑誌などから,最近の情報も収集しています。

 さて,以上で電験三種の試験の概要は説明した感じです。次回は,肝心の勉強方法をメインに語る予定です。では。

 

 

 

 

【電力系統】発電所(11)【いろいろな発電所】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は,これまで説明してきた発電所以外のいくつかの発電所について,簡単に述べたいと思います。

地熱発電

 再生エネルギーの四天王(ラルフ0が勝手に言っているだけです。(^^;)のどん尻にひかえし地熱発電所。水力発電風力発電太陽光発電と比べると,なんか目立ちませんね。これはやはり設置できる適所が相当に限られてしまうためと思われます。

 構造としては,火力発電所にちょっと似ているかな。ボイラの代わりに蒸気を発生させるのが,地熱井とか蒸気井とか呼ばれるもので,地下深く井戸を掘って(深いもので3000mくらい)水蒸気を取り出し,これでタービンを回しています。

 発電機の極対数(回転子における磁石のNS極のペアの数)は火力発電と同じ1で,したがって発電機の回転数は,1分間に50Hz系統では3000回転,60Hz系統では3600回転ということになるようです(調べてみつかった限りですが)。

 なお,地熱の熱エネルギーの元は何かというと,天然の放射性元素の崩壊熱です。

 

 

エンジン発電機

 原動機として,ガスタービンや蒸気タービンではなく,ディーゼルエンジンやガスエンジンを使った発電機です。容量は数百kVAから数MVA程度で,あまり大きくありません。

 用途としては,あまり負荷容量が大きくない島嶼地域の電源として用いられたリ,起動が速いことから,非常用電源としてもよく用いられます。

 手元によい資料がないことから断言できないのですが,エンジンと発電機はギアを介して接続されていたと思います。それも風力発電の場合は原動機から見て増速でしたが,エンジン発電機の場合は減速のはずです。おそらく,トルク重視のためではないかと考えています。P:有効電力,ω:角速度,T:トルクとすると,

  P=ωT

の関係があります。Pは負荷との見合いで決まってきますから一定とすると,ωが小さい方がTが大きな値を取れることになります。

 このあたり,正確な情報をお持ちの方いたら,是非教えてください。

 

 

化学電池 

 太陽電池は,光電効果がエネルギーの元ですから,物理的な電池だといえます。これに対して,化学反応を利用した電池があります。

 その中でも燃料電池と呼ばれる電池は発電が可能です。これは,負極活物質に燃料(水素など),正極活物質に酸素を用いると,いわゆる燃焼反応(酸化反応)と同様な化学反応が起こるためです。

 リン酸型燃料電池,溶解炭酸塩型燃料電池などがあります。

 燃料電池も基本は発電の方向だけなので,一次電池の一種です。これに対し,最初まず充電する必要があるのですが,充電すれば放電,すなわち発電方向に運転可能な二次電池があります。開発という視点では,燃料電池よりも,こちらの二次電池の方が進んでいるといえるでしょう。

 鉛電池,リチウムイオン電池NaS電池,レドックスフロー電池などが電力系統では用いられています。二次電池の使い方としては,揚水発電所と似ています。というより,建設場所が制限される揚水発電所に代わる存在として,二次電池(蓄電池)が期待されている,といったところです。

 なお,これらの化学電池も,太陽電池と同様に直流を出力するものですから,系統に連系するためには,PCS(Power Conditioning System)が必要になります。

 

 さて,11回の記事とは思ったよりも長くなりました。ここらでいったん発電所の話題を締めくくりたいと思います。まぁ,ときどき思い出したように,発電所に話題が戻ってくることはあると思うのですが。

 それではまた。

 

 

 

【電力系統】発電所(10)【太陽光発電所】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

 今回は,風力発電所と並ぶ再生可能エネルギーの雄,太陽光発電所について語りましょう。

太陽光発電

概要

 太陽光発電は,これまで述べてきたいろんな種類の発電所の中でも,みなさんになじみ深いものではないでしょうか。なにせ,御家庭の屋根に太陽電池のパネルを載せて発電するのも,立派に太陽光発電”所”ですもんね。

 これまで述べてきた各種発電方式と太陽光発電との大きな違いは,回転機を使っていないという点があげられます。回転機を使わない発電方式としては,太陽光発電と,あと燃料電池くらいじゃないかな?

 太陽光発電方式では,まず太陽光パネル(後で説明しますがアレイという単位です)があって,これが直流の電圧を発生します。また,この電圧がさほど高くなく,このままだと不都合なので,直流を変圧する仕組みを使います。そのためには以前めんどくさいと言った方法を取らざるをえなくて,多くの太陽光では直流チョッパというパワーエレクトロニクスの技術を使って,直流電圧を昇圧します。チョッパ方式では昇圧が不足する場合には,太陽光パネルの直流を一度高周波の交流に変換して,高周波用変圧器で昇圧,その後再度直流に戻すという方法がとられます(DC-DCコンバータといいます)。

 さて,昇圧された先には直流部にコンデンサを抱えたインバータがあり,このインバータが直流を交流に変換して,系統に連系します。なお,必要に応じてインバータの交流側に変換用変圧器を設置する場合があります。また,チョッパからインバータまでの一連のパワーエレクトロニクス装置をPCS(Power Conditioning System)といいます。風力発電のDCリンク方式の場合と同様ですね。

 

 

太陽光パネルの構成

 太陽光パネルなどというぼんやりとした言い方をしてきましたが,あまり正確ではありません。太陽電池の最小単位はセルと呼ばれるものです。これは半導体素子にしては面積が大きめのpn接合ダイオードなのです。

 これに太陽光が当たると,いわゆる光電効果が生じて,多量の電子と正孔が生じます。すると,pn接合部の電界によって,電子はn側に,正孔はp側に移動し,n側は負に,p側は正に帯電することになり,電圧が生じます。これに負荷を接続すれば,電流が流れて電力が取り出せます。

 ところで,ひとつのセルではあまりに電圧が小さいので(セルの出力電圧は0.5V),これを複数直列に接続して電圧を高める単位を作ります。この単位がモジュールです。モジュールでは36個のセルを直列接続して,18Vの出力電圧とすることが多いようです。また,出力電力は40~120Wくらいのようです。

 モジュールを更に複数直列に接続し,逆阻止ダイオードや還流ダイオードを付け加えたものをストリングといいます。

 ストリングを複数,こんどは並列に接続したものをアレイといいます。太陽電池は,皆さんの御家庭も含めて,このアレイの形で使われています。

メガソーラ

 出力が1MW前後以上(へんな言い方ですが)の太陽光発電をメガソーラといいます。

 御家庭用から,50kWくらいまでの太陽光発電設備だと,PCSおよびその系統接続が単相ですが,それ以上になってくると,三相になってきます。一方で,メガソーラクラスの設備でもあまり大容量のアレイを作るのは技術的に難しいのか,容量を分割してPCSを複数設置することが多いようです。

 

では,今回はこのあたりで。

 

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【電力系統】発電所(9)【風力発電所】

 こんにちは。電気でぶ猫のラルフ0です。

  今回は再生可能エネルギー四天王(ラルフ0が勝手に呼んでいるだけです(^^;)のひとつである風力発電所について語りたいと思います。

風力発電所

概要 

 風,すなわち空気の運動エネルギーを風車の翼で回転エネルギーに変換し,これから先はいつもと同じで発電機が電気エネルギーに変換します。典型的な自然エネルギー再生可能エネルギーです。

 風車にもいろいろなタイプがありますが,多く使われえるのは皆さんが風車というと頭に描くであろう,3枚翼のタイプがいちばんよくつかわれます。

 また,発電機を含む電気部分もいろいろな種類があります。なにせ,まさしく「風まかせ」なので,発電機の回転数が一定しません。すると普通の同期発電機をそのまま使ったのでは,系統との同期が取れなくて困ってしまいます。そこで,種々工夫がなされているわけです。この記事では風力発電所の電気部分について代表的な3種類について説明します。

 ひとつめはかご型誘導発電機を使うタイプです。かご型誘導機は,電機子に流れる電流が作る回転磁束がかごを編んだような形をしている回転子と鎖交することで,回転子に電流が流れ界磁磁束が誘導されるものです。このとき,回転子の回転速度が同期速度になってしまうと,回転子を鎖交する磁束が時間変化してくれなくなり,界磁磁束が作れません。そのため,誘導機は必ず同期速度とは異なる速度で回転しています。そして,同期速度よりも回転速度が遅い場合は誘導電動機になり,同期速度よりも回転速度が速い場合は誘導発電機になります。

 つまり,同期速度よりも速い回転速度であれば,速度が変動してもかまわないわけで,風力発電用の発電機として用いられます。なお,起動時に突入電流と呼ばれる大きな電流が流れることと,必ず遅相無効電力を消費することに注意しなければなりません。遅相無効電力の消費に対しては,コンデンサを発電機と並列に接続して調整しています。これらの注意点から,あまり容量の大きい発電所には用いられていません。

 ふたつめは,DFIG(Doubly-Fed Induction Generator)を用いるタイプです。これは,水力発電所のところで説明した可変速発電機とほぼ同じものです。すなわち,誘導機ではあるのですが,回転子に三相の巻き線を120°ずつ空間的にずらして配置し,パワーエレクトロニクスを用いた周波数変換装置により低周波三相交流を流して,低周波数で回転する界磁磁束を生じさせます。こうすることで,回転子の回転速度が同期速度と異なっても界磁磁束は電機子磁束と同期をとることができるのでした。以上の仕組みで風力発電機における速度変動に対応しています。

 DFIGの場合は,起動時に突入電流が流れることもないし,無効電力を制御することもできるので,中容量(2MWくらい)までの風力発電所によく採用されます。

 みっつめは,DCリンク方式と呼ばれるタイプです。発電機には界磁回路を必要としない永久磁石発電機(PMG)を用い,電機子側にパワーエレクトロニクスによる周波数変換装置を設置します。周波数変換装置はコンバータ(レクティファイア)が交流を直流に変換します。そして,インバータが直流を交流に変換し,系統と連系します。直流(DC)を介して連系するので,「DCリンク」方式というわけですね。なお,このコンバータ,インバータを合わせてPCS(Power Conditioning System)と呼びます。

 制御の自由度が大きいことが効いているのか,比較的大容量(4MW以上)の風力発電所によく採用されます。

 

 

風力発電機の回転数とギア

 上記みっつの方法のどれでもそうなのですが,風力発電機の特徴のひとつとして,原動機に相当する風車と発電機が直接一本の軸で接続されるのではなく,ギアを介した接続になることがあります。

 というのは,風車の回転数は,せいぜい1分間に数十回です。これをそのまま発電機につなぐことを考えると,極対数(発電機回転子の磁石のNS極のペアの数)が100とかなって,現実的ではありません。そこで,風車と発電機の間にギアをかまして増速しています。風力発電用の発電機の極対数は2~4くらいが選択されています。

 

 では,今回はこのあたりで。